「報連相」から始まるコミュニケーション

「報連相(ホウ・レン・ソウ)」の徹底。

「報連相」は、報告・連絡・相談の頭文字を取ってこのように言われます。新入社員時代に限らず、社会においては必須であり、最低限のスキルといえるかも知れません。



「報連相」はだれに習ったか

先ほど「必須で最低限」と言いましたが、皆さんは改めてイチから丁寧に教えてもらった経験はありますか?
「ある」という方は少ないのではないでしょうか。

今でこそ、インターネットやビジネス書などで「報連相」ということを見かける機会も増えました。ですが、ひと昔前は「見て習え」というスタイルも多かったように思います。
私自身も、はじめは先輩社員たちを真似て、自分なりに試行錯誤してやったものでした。


今回は、この「報連相」の大切さを感じたエピソードを紹介しながら、私なりに身近なところでのコミュニケーションの取り方を考えてみようと思います。

コミュニケーション不足が露呈したある場面

先日、ある研究室での出来事です。その日は、ある1人の若手研究者が中間発表をする日で、私も参加してきました。

彼の中間発表は、昨秋から約半年ぶりのこと。その半年前にも自分のテーマをうまく取り扱えてない様子があり、当初より研究に時間を多く費やしている状況でした。

今回はどうだったかというと…。

テーマの難しさもあるとはいえ、残念ながらその半年前とほとんど変化が見受けられないものだったのです。


ですが、問題はその場における彼と周囲のコミュニケーションのあり方でした。つまり、彼と指導する上司、あるいは彼とその彼と同じ若手研究者の仲間のあいだで交わされるやりとりです。

本来、同じ研究室で研究をしているのですから、お互いの研究に関して何らかやりとりがあるはずです。ところが、どちらも「半年ぶりに説明した・聞いた」という状況で現状把握をするのが精一杯。肝心の討論が一向に深まりません。
結局のところ、何の方向性も見えないまま終了となってしまいました。


本番の発表に向けて貴重な意見を交わすことができるはずの中間発表の場が、皮肉にも日々のコミュニケーション不足を「発表」する場になってしまったのでした。

双方向から「報連相」を活性化する

今回のケースは、どのようにすれば防ぐことができたのでしょうか。私はこのケースを目の当たりにして、2つ思ったことがあります。


1つは、研究をしている若手研究者の立場から。

取り組んでいるテーマについて、同じ研究室にいる仲間や上司と、普段から情報交換や議論をしていく必要があるのではないでしょうか。

1人では見えないものも、誰かに話し、相談や議論をすることで新しい展開が見えてきます。そのような普段からの「報連相」の積み重ねによって、彼の研究もよりスムーズに進むでしょう。また、中間発表などの討論もより深まったものになるように思いました。
もう1つは、指導する上司の立場から。

最初にも触れた通り、「報連相」は誰かが教えるというよりは、ある程度大人になれば主体的に実行していくものなのかも知れません。特に、自分でそうしてきた人たちにとっては、「そんなこと言わなくても当たり前だ」と考えたくなるのもよく分かります。

しかし、現に自分の研究室に所属する研究者が”デッドロック“に乗り上げているわけです。そのような時こそ、「報連相」をするように促してもよいのではないでしょうか。

そうすることで「報連相」の価値を言外に伝えながら、コミュニケーションを取る機会も増えます。そして、その結果として、人を育てることにもつながっていくように思いました。


「報連相」で示される、報告・連絡・相談という行為は、コミュニケーションの土台でもあります。 「報連相」という一歩一歩の積み重ねが、信頼関係を築き、関係を深めてくれるのではないでしょうか。


*Written by A.KOBAYASHI